概要
Amazon.co.jp: 「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 : 中室牧子, 津川友介: Japanese Books
- 因果推論の基本的な考え方、具体例、経済学・教育学・医学に関する事例などが紹介されている
- 「単なる相関関係なのに、因果関係があると誤解してしまう問題」を解説
- 「因果関係があることを証明する方法」を解説
受賞理由: 「自然実験」と呼ばれる手法を用いて、労働市場に関する新たな知見を提供したこと
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- マサチューセッツ工科大学の教授
- 自然実験の手法を経済学研究に広く応用し、因果関係の解明に貢献
- 教育政策や移民政策などの分野で重要な知見を提供
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- スタンフォード大学の教授
- 自然実験の理論的な基礎を築き、因果推論の方法論を発展させた
- 実証経済学の手法を体系化し、研究の信頼性を高めた
自然実験とは:
- 社会実験は倫理的・実践的な問題があるが、自然実験は社会変化の前後を比較することで因果関係を明らかにできる
- 労働市場、教育、医療、開発経済学など、様々な分野で自然実験の手法が活用されている
- 3人の受賞者は、自然実験の手法を確立し、経済学研究の信頼性と精度を大きく向上させた
目次
1枚要約
- 因果推論:因果関係の統計的推定手法
- 相関関係:単なる時系列相関 ≠ 因果関係
- 因果なし:偶然、交絡因子、逆因果
- 因果あり:反事実 OR 代替事実
- エビデンス:因果関係を示唆する根拠
- エビデンスピラミッド:エビデンスの序列(右図)
- メタアナリシスが最高レベルのエビデンス
- メタアナリシス:複数のRCT統合
- RCT(ランダム化比較試験):人為的に介入群と対照群に2分割してセレクションバイアスを回避
- 自然実験:RCTが使えない場合、介入群と対照群が自然に分かれた状況を利用 例)法改正
- 擬似実験:自然実験が使えない場合、擬似的な実験状態を作り出す手法(DiD, IV, RDD, PSM)
- 単純前後比較法:時間経過で前後比較。デメリットとして、「時系列トレンド影響」や「平均への回帰現象」を排除できない
- 擬似実験手法1:差分の差分法, DiD(difference in differences):「介入前後の結果の差」と「介入後と対照群の結果の差」2つの差をとる方法。前後比較を改良したもの。
- 擬似実験手法2:操作変数法, IV(method of instrumental variables):「原因に影響することでしか、結果に影響を与えない」という第3の変数=「操作変数」を用いて、介入群と対照群を比較可能にする方法
- 擬似実験手法3:回帰不連続デザイン,RDD(regression discontinuity design):「恣意的に決定されたカットオフ値の両サイド」で、介入群と対照群が分かれる状況を利用して因果効果を推定する方法
- 擬似実験手法4:プロペンシティスコアマッチング法,PSM(propensity score matching):複数の共変量をまとめて1つの得点にしてマッチングする手法。
回帰分析(regression analysis):説明変数と目的変数の関係を明らかにする統計的手法
その他Tips
因果関係を読み解く5ステップ
- 1:原因を定義
- 2:結果を定義
- 3:3つのチェックを確認
- 単なる偶然ではないか
- 交絡因子が存在していないか
- 逆の因果関係が存在していないか
- 4:反事実を設定
- 5:比較可能になるように調整
- 「嘘には三種類ある。嘘と大嘘、そして統計。」by 英国の首相ベンジャミン・ディズレーリ
- 私見:因果推論を習得して、統計っぽい嘘に騙されない生活を!