kaeken(嘉永島健司)のTech探究ブログ

主に情報科学/情報技術全般に関する知見をポストします。(最近は、特にData Science、機械学習、深層学習、統計学、Python、数学、ビッグデータ)

『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』まとめ

概要

  • 書籍

Amazon.co.jp: 解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法 eBook : 馬田隆明: Kindle Store

  • 著者

Takaaki Umada (馬田隆明) 個人サイト

東京大学 FoundX ディレクター。

日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。
東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、
2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援と
アントレプレナーシップ教育に従事する。
スタートアップ向けのスライド、ブログなどで情報提供を行っている。
著書に『逆説のスタートアップ思考』
『成功する起業家は居場所を選ぶ』
『未来を実装する』
『解像度を上げる』。

スタートアップ・新規事業に関わる方向けに、非常に有益なスライドを多数公開している。

speakerdeck.com

全体像

「解像度を上げる」とは?

そもそも解像度とは

  • 思考の明晰さ、精細さ
  • 物事の理解度
  • 物事の表現

解像度を上げる思考と行動パターン

  • 優れた起業家から見出した共通の思考と行動パターン
  • 全てのビジネスパートナーが使えるようにするのが本書の目的

解像度が高い状態

  • はっきりした顧客像
  • 明確かつ簡潔な話
  • 具体的な例
  • 多くの事例を知っている
  • 様々な可能性を考慮
  • 洞察がユニーク
  • これからやることの布石が見事

解像度が低い状態

  • ぼんやりした顧客像
  • 話を聞くと疑問が湧いてくる
  • 具体性のない、 ふんわりした話
  • 競合や事例を知らない
  • 安易な解決策
  • バラバラで論理の飛躍のある話
  • 見通しのない進め方

解像度を上げる4つの視点(深さ・広さ・構造・時間)と診断方法

深さ

  • 原因・要因
  • 方法の具体化・掘り下げ
  • 診断方法
    • どれくらい具体的か?

広さ

  • 考慮する原因・要因
  • アプローチの多様性
  • 診断方法
    • どれくらい多面的か?

構造

  • 意味ある要素に分割
  • 関係性や重要性を把握
  • 診断方法
    • どれくらい簡潔か?

時間

  • 経時変化・因果関係
  • プロセスや流れを捉える
  • 診断方法
    • どれくらい道筋立っているか?

4つの視点で十分ロジックツリー化できた場合

  • 深さ:少なくとも7階層以上

4つの視点にこだわり過ぎた場合

  • バランスよく具体化する

自社の解像度を診断

  • エレベーターピッチの準備をしてみる

エレベーターピッチの 15 の具体例 (失敗しないピッチテンプレート付き) [2024] • Asana

解像度の上げ方(全般):3つの基本姿勢

情報収集&思考&行動のループを回す

  • 情報収集の質と量
  • 思考の質と量
  • 行動の質と量
  • MVP (実用性最小の製品)を作る

型を意識する

  • 4視点

粘り強く取り組む

  • 浅い思考段階で諦めない

「課題」と「解決策」の解像度

「課題」の解像度の上げ方

課題 x 深さ

  • 型1 言語化して現状を把握する
  • 型2 サーベイをする
  • 型3 インタビューをする
  • 型4 現場に没入する
  • 型5 個に迫る
  • 型6 Why so? を繰り返して、事実から洞察を導く

  • 型7 習慣的に言語化する
  • 型8 言葉や概念、知識を増やす
  • 型9 コミュニティで深掘りを加速する

課題 x 広さ

  • 型15 前提を疑う
  • 型16 視座を変える

  • 型17 体験する
  • 型18 人と話す
  • 型19 あらためて深める場所を決める

課題 x 構造

  • 型24 分ける

  • 型25 比べる
  • 型26 関係づける
  • 型27 省く
  • 型28 質問をする
  • 型29 構造のパターンを知る
    • レイヤー構造など

課題 x 時間

  • 型42 流れを見る
  • 型43 歴史を振り返る

「解決策」の解像度の上げ方

解決策 x 深さ

  • 型10 プレスリリースを書いてみる
  • 型11 行動可能な単位までHowを問う
  • 型12 専門性を磨いて新たな解決策に気づく
  • 型13 手で考える
  • 型14 体で考える

解決策 x 広さ

  • 型20 使える道具を増やす
  • 型21 外部資源を獲得する前提で広げる
  • 型22 探索に資源を割り当てる
  • 型23 解決策の真の意味を考える

解決策 x 構造

  • 型30 解決する範囲を決める
  • 型31 構造のパターンに当てはめる
  • 型32 新しい組み合わせを生み出す
  • 型33 要素間の相性を考える
  • 型34 捨てることで独自性を出す
  • 型35 制約を意識する
  • 型36 他システムとの連携を考える
  • 型37 意図していなかったシステムのふるまいに対処する
  • 型38 ストーリーを描く
  • 型39 雑な構造から描きはじめる

解決策 x 時間

  • 型44 最適なステップを見出す
  • 型45 シミュレーションする
  • 型46 好循環を作り出す
  • 型47 長期の視点で考えて時間を味方につける
  • 型48 アジリティと学ぶ力を高める

実験して検証する

  • 解像度を上げた課題と解決策も仮説にすぎない
  • 実験によって検証
  • 小さな実験 (MVP)で顧客の解像度を上げる
  • 身銭を切ってもらい、 課題の大きさを検証する
  • システムに働きかけて試す
  • 粘り強く改善し続ける
  • 行動することで機会を生む

「未来」の解像度の上げ方

  • 課題とは現実と理想のギャップ
  • 未来を描くために必要な 「分析」 と 「意思」
  • 将来世代の視座に立って 「あるべき姿」 を考える
  • 宇宙の視座に立って、 人類の課題を考える
  • 誰かに取り組んでほしい大きな課題に取り組み、 未来を受け継ぐ
  • 未来に向けて行動を始めて、 粘り強く考え続ける

本書を読んだ所感

  • ロジカルシンキングやロジックツリー作成など、いわゆるコンサルフレームワークは多数出ているが、解像度という切り口が斬新
  • 「解像度の上げ方」についてかなり解像度が上がった
  • とはいえ、本書でも記載があるとおり、実践行動して初めて意味をもつノウハウなので、今後仕事や生活で「解像度を上げる訓練」をしていく必要あり
  • システム開発においても、「要件定義の解像度」「設計の解像度」「実装の解像度」「検証の解像度」「運用の解像度」など、細分化して、各プロセスの解像度を上げていくことが可能